新生「人形芝居えびす座」に向けて
2024年5月3日、えびす座史上、これまでにない衝撃が走ります。人形芝居えびす座を設立した座長の武地秀実さんが病のため突然逝去されたのです(享年69)。あまりにも突然の出来事に、一人遺された囃子方として相方を務める松田恵司は、頭の中が真っ白になり、今後の行方をどうするのか考えることができない日々が続きました。
「私一人で何ができるのだろう?いっそ、このままやめてしまうのが楽だ…。」と考えていると、えびす座の事務室に日々いろんな人が訪れたのです。そして「松田さん、どうするの?」「やめないで」「私たちで良ければ一緒に手伝ってあげる」と毎日のように、まるで天国の武地さんが頼んでいるように「えびす座を存続してほしい」という願いが届けられました。
そして、ずぅーと冷静に考えた結果、「武地さんが命がけで守って来られた『えびすかき』をここで潰してしまうと、この先永久に再興することはないであろう。そうさせないためには、これを継承するのが自分の使命なのではないか。そうすることで武地さんの供養にもなるし、私も人生に悔いを残すことはない。それには、私が先頭に立って『えびすかき』後継者を育成するのだ」と決心したのです。

そう決めた後は、不思議と『えびすかき』を教えてほしいという人たちが現れ、定期的に稽古日を設けて育成する日々が始まりました。その成果もあり、武地さんが亡くなられてからしばらく断っていた出演オファーも受けられるようになり、かつての演目を完全復活させることが今の目標になりました。
囃子方メンバーが育ってきた今、次は現在の私の役割を継承させることが急務だと思っています。私の役割は「太夫・人形遣い」で一人遣いのえびす人形を操りながら、詞章を語り囃子方との掛け合いを行うものです。そして、これを指導できるのは私しかいないと断言できます。それは、武地さんと18年間ずっと同じ舞台を踏みつづけた中で、武地さんの発声、掛け合いの「間」、場の空気感、躍動感や笑いのツボ、そして天真爛漫な笑顔の再現。これらが18年間を通じて私が武地さんから学んだ「財産」であり、後継者への「財産」でもあります。
まだまだ発展途上の人形芝居えびす座ではありますが、これからも皆々様方から見守っていただきたくお願い申し上げます。
2025年9月14日 人形芝居えびす座 2代目座長 松田恵司

